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校長あいさつGreeting

 
 創立150周年をむかえて
秋田大学教育文化学部附属小学校 校長 佐々木 雅子

   150年前の1874年(明治7年)、現在の秋田大学教育文化学部附属小学校は、本学部の淵源である秋田県伝習学校から改称した太平学校の附属小学校として産声をあげました。日本が明治5年に学制を公布し、近世封建社会における教育から近代教育へと移り変わる一大転換期に設立されました。誰もが平等に教育を受けられるようになり、新しい教育方法を身につけるための教員養成が開始されました。本校は、明治の始まりから現在に至るまで、教員養成を使命の一つとし、秋田県の教育を牽引する先進的な実践的教育研究の役割を担い、小学校教育の充実を追究してまいりました。
 150周年を迎えた節目の今年度、子どもたちは学校の歴史を振り返るとともに、自分たちがその歴史を継承し新たな歴史を紡いでいくのだという明確な自覚の下で活動してきました。底知れぬ可能性を示し、努力を重ね成長していく子どもたちの姿を幾度となく目にし、ある言葉が浮かんできました。それは、「無から有を生み出す」というものです。150年の歴史や現在の社会の中にヒントとなるものを選び出し、様々な行事やプロジェクトをゼロから自分たちで創り上げていく精神は、はとの子が誇れる伝統の一つであると再認識いたしました。
 強く記憶に残った一場面があります。11月1日、150周年プロジェクトのひとつ映画制作チームの子どもたちからインタビューを受けました。質問は全部で6問。最も難しく答えに窮したのが、「子どもたちが楽しく過ごせるように先生が工夫していることは何ですか?」という質問でした。何とか答えなくてはと思いながら答えている一方で、「『楽しく』ってどういうこと?」と考えていました。私はわかっていない、と思いながら話し続けていました。同時に、子どもたちが学校生活において最も求めている感情は「楽しい」ということなのかと、今さらながら気づき、鈍い痛みを覚えていました。次の質問もなかなかのものでした。「先生にとって附属小学校はどんな場所ですか?」というものでした。私は考えている時間はないなと思い、感じていたことをそのまま正直に答えました。「忘れていたものを思い出させてくれる場所です。大人になると忙しいですよね。笑うこととか、悲しむこととか、そういったことをちょっと置いておいて、いろんな仕事を片付けちゃうことに注意を向けがちだけど、そんなに急がないで、もうちょっと一瞬一瞬を楽しもうよ、味わいましょうよ、そういうことを思い出させてくれる場所です。」と答えました。
 「小学校において楽しいとは?」、「子どもたちにとって学校とは?」と考えているうちに、平安時代末期850年前に編まれた「梁塵秘抄」に収められた歌を思い出しました。
    遊びをせんとや生(うま)れけむ、
    戯(たはぶ)れせんとや生(むま)れけん、
    遊ぶ子どもの声聞けば、
    我が身さえこそ揺(ゆる)がるれ
 
 そして、三木清著『人生論ノート』の「娯楽について」の一節に思いが至りました。「生活と娯楽とは区別されながら一つのものである。それらを抽象的に対立させるところから、娯楽についての、また生活についての、種々の間違った観念が生じている。娯楽が生活になり生活が娯楽にならなければならない。生活と娯楽とが人格的統一にもたらされることが必要である。生活を楽しむということ、従って幸福というものがその際根本の観念でなければならぬ。」この部分の「生活」を「学び」に、「娯楽」を「遊び」に置き換えると、よくわかりました。
 子どもたちにとって「楽しい学校」とは、学びと遊びが区別されながら一つのものであると思いました。遊びを学びに、学びを遊びにしながら成長していけるように力を尽くし、幸福な人生を歩めるようにと祈ることが、はとの子たちを育てるということだと理解しました。
 「200年後にも残っていてほしいものは何ですか?」とも問われました。子どもたちの明るい笑顔と答えました。はとの子たちの明るい笑顔が50年先、100年先、永遠に続くよう、皆様のご支援をどうぞよろしくお願い申し上げます。